愚かの頂で、骨になるまで

本と、マンガと、ボードゲームが心の主食

今年読んでおもしろかった漫画(2014)

今年のまとめと、

今週のお題「2014年のお別れ」〈2014年をふりかえる 3〉」

をかねて、今年読んでおもしろかった漫画を列挙。

アナーキー・イン・ザ・JK

アナーキー・イン・ザ・JK (ヤングジャンプコミックス)

アナーキー・イン・ザ・JK (ヤングジャンプコミックス)

 

今年一番の衝撃。
正直言ってちょうおもしろかった。
けれどだれにでも勧められる漫画ではないです。
どこかへんな女子高生たちがファミレスでダラダラしているだけ、
みたいな漫画が繰り広げられます。
単眼少女だったり男の娘だったり興奮すると尻が光る子だったり。
基本的に下品でしょーもない会話が繰り広げられるだけですが、
そのテンポと言葉選びは非常にツボです。

ストレッチ

ストレッチ(1) (ビッグコミックススペシャル)

ストレッチ(1) (ビッグコミックススペシャル)

 

ストレッチ漫画。
事情があってシェアハウスをしている、20台前半の女性2人の話。
2人は高校の先輩後輩で、どうも東北出身らしい。
東北の地震を受けて2人ですむ事になったらしいことはほのめかされるが、
あくまでほのめかされるだけ。
なんか事情がありそうな雰囲気を漂わせつつ、2人の日常とストレッチを描くだけ。
蘭がかわいいです。

ドミトリーともきんす

ドミトリーともきんす

ドミトリーともきんす

 

高野文子、12年ぶりの単行本。
特に、科学者をテーマにした本とあり、面白かった。
大学に関連施設のあった牧野富太郎の人柄の鱗片に触れられた気がした。

なにより、高野文子がすごく丁寧に一つ一つの話を作っている印象を受けた。
自伝やエピソードの一つを取り上げ、ある程度想像をおりまぜ、
一人一人の科学者たちがどんな人だったのかをふっと匂い立ち上がらせてみる。
おそらく丁寧で迅速で熟練した手つきでないと綺麗には立ち上がらないものなんだろうな、と思わせてくれる完成度があった。
あと、作中で出てくるうどんの湯気の表現がとても好き。

子供はわかってあげない

子供はわかってあげない(上) (モーニング KC)

子供はわかってあげない(上) (モーニング KC)

 

完全ノーマークでした。
出て、ネットで少し評判になってから読みましたがやられました。
評判になるのも分かる。
非常に画力に富んでいる訳ではないですが、
この作品の空気感とテンポのためにはあまりに絵がマッチしている。
そして一つ一つの言葉選びがぐさぐさ来る。
そーかーそーだよなー、そーいうことばかけるよなー、と何か知らんが納得してしまう。

超能力、新興宗教、ボーイミーツガール、父親探し、とか
どんだけハードボイルドでサスペンスでスペクタクルだ、と思ったけど、
まったくもってそんな感じではなく、青春で透明感あってあったかかったです。
悪人1人もいない。

ちーちゃんはちょっと足りない

空が灰色だから」のころから阿部共実は大好きなのだが、
遂にこの作品で「この漫画がすごい!」の一位を受賞した。
阿部共実の作品を読む時、「これは”どっち”だろう」とハラハラしながら結末まで読み進める事がある。
“どっち”とは、救いがあるのかないのか、という問いなのだが、
自分が、そのいずれであってほしいと思っているかは分からないまま読んでいる。
ちーちゃんはちょっと足りない」は「ブラックギャラクシー6」と同時発売であり、
どっちかが”ある”側で、どっちかが”ない”側であることは見抜けていたが、
ちーちゃんが”ない”側だとは予想だにしていなかった。
何より本作すごいのが、ちーちゃんは本当の意味での主人公ではなく、
真の(読者自身を投影する)主人公を浮かび上がらせる装置にすぎないところ。
それでこのタイトル付けるか、って。

正直、ちーちゃんがこんなにたくさんの人に評価される事に少し意外な思いをもっている。
この作品、もんのすごく自分には突き刺さったし痛かったが、
同じような経験や思いを持っている人が結構いるものなのだな、と感じた。

おかえりなさい サナギさん

サナギさんがすごく好き。
正しく言うと施川ユウキがすごく好き。
更に正しく言うと、がんばれ酢めし疑獄!! がすごく好き。

どーでも良いネタで高校生(たぶん)がグダグダ言ってるだけですが、
その着眼点とユーモアセンスにはいつも脱帽です。
たまにおもしろがるだけではなく、感心さえしてしまう事がある。
多分作者は日常生活においても脳内でいろんな突っ込み入れながら生きているんだろうな、と思う。

宇宙兄弟

宇宙兄弟(1)

宇宙兄弟(1)

 

え?いまさら?
そうです。
今更全巻集めてしまいました。

あんだけ話題になっているので面白くないはずは無いんです。
それは知っていました。
でも、それ以上でした。
単純に題材や内容が面白いだけじゃない。
登場人物たちの悩み方や現実の壁がリアルに描かれているので、
一緒に手にあせ握って没頭できる。
(その解決方法が多少御都合主義だとしても、漫画にそれを指摘するのは無粋かと)

とにかく先が気になる。

MAMA

MAMA 1 (BUNCH COMICS)

MAMA 1 (BUNCH COMICS)

 

売野機子、初の長篇連載作品。
売野機子は好きで大体持っていますが、
ここのところ MAMA で迫力ができた気がしています。
国中から歌のうまい少年のみを集めた聖歌隊の話。
ここで歌声が神に認められるとこの世のものと思えない歌声を得たあげく、最後には天に昇る事となる。
それを至上の名誉ととらえるもの、バカにしつつ恐れるもの、家族の生活のために目指すもの、その様々な目的と思いと性格を持った少年たちの話。
不安定だからこそ到達できる一つの極地を描き切っていると思う。

路地恋花

路地恋花 1 (アフタヌーンKC)

路地恋花 1 (アフタヌーンKC)

 

作品自体は2010年から2012年の作品。
恋愛漫画が読みたくてお勧めされているものを読んでみた。
京都の町外れにある手に職系の若者たちが集まる長屋を舞台にした、
一話完結型の恋愛漫画
銀細工師とか、本の装丁屋とか、花屋とか、美容師とか。
重いトラウマがあってどーの、という話ではなく、
軽いタッチで人の思いと時間が過ぎていく話がたくさん入っています。


夜とコンクリート

夜とコンクリート

夜とコンクリート

 

最近大のお気に入りの町田洋。
相変わらずのクオリティ。
夏休みの町とか、なんでこんな作品をかけるんだろう。
この人は抜群に「夏の空気」を描くのが上手いと思う。
すごく少ない線と面で、夏のヒリヒリする暑さを書き切る。
更にはそこにもの寂しさや懐かしさや愛情や執着さえ乗せ切る。
光の使い方が上手いんだろうなーとは思う。

こちらで一話読めるので是非。
http://mavo.takekuma.jp/title.php?title=32